姉の死 vol.29

A駅に着いた。

駐車場に車を停め下車したところで、封筒を差し出された。

「この度は突然迷惑をかけたから……」とのことで

固辞したものの渡された。

今回と、次回四十九日での足代にとのこと。

ぶっちゃけ、相当有難い。

後で確認したら中には10万円入ってた。

 

ところで書き忘れてたが、今回の一連のお支払い

私はいくらお出ししましょうかと申し出たところ

これは頑なに固辞され、受け取ってもらえなかった。

御霊前という形でも、と粘ったがダメだった。

先方がそう頑ななら、それでいいんだろう。

実際、相当こちらは助かった。

 

新幹線ホームに向かうと、X氏が切符を買ってくださった。

いやいや今足代をいただいたばかりなのに申し訳ない。

 

新幹線の時間まで2時間近くあった。

私はひとりでぶらつくのは平気だし、ここでお別れで良かったんだけど

X氏がお茶でも、と言われるのでお付き合いすることに。

 

私のキャリーはX氏が持ってくれたままである。

しかもゴロゴロ転がしていいのに地面につかないよう手に持って。

本当に優しい人だ。

 

X氏は、A駅から地下に入った。

ここで私は、A駅に地下街があることを初めて知る。

前日、雨の中キャリー転がしながら彷徨ったのは何のためだったんだ……。

まあ、A駅ほど大きな駅なら地下街あるよなフツー。

田舎者には発想が及ばなかったのよ……。

 

百貨店の中の喫茶室へ入った。

ちょうど奥の個室が空いており、そこへ入れていただいた。

ふたりとも抹茶パフェを頼んだ。

X氏が甘党なのか、それとも甘党の姉に合わせて甘いものに慣れてるのか

これ以降、私もしばしばX氏と甘いものをいただく機会ができることになる。

 

縦に長いオシャレなグラスに入った、大きな抹茶パフェ。

写真を拾おうと検索したらイマイチ違う気がして

よくよく調べてみたらこの喫茶室、今年2月に店が変わってるそうな。残念。

結構高いお値段だったのは覚えている。百貨店内のカフェだしな。

つか、私はX氏と食事やお茶に行っても、私がレシートを貰うこと

(私が支払いをすること)は絶対に無いので

正確な値段や店名を覚えておくのは至難の業だな。

 

パフェを食べながら思い出話をして、X氏はまたダーダー泣いた。

結局大きなパフェを全部食べ切らないまま店を出て駅に行った。

 

今回は本当にお世話になりました、じゃあまた来月とお別れし

X氏が買ってくださった新幹線に乗ったら

まさかーのグリーン車だよ!

この方は本当にどこまで気を遣ってくださるのか。

新卒で研修に行くのに会社がグリーン車に乗せてくれた以来

グリーン車なんて30年近くぶりだよ。

おしぼり出てくるんだー、前の席の人は毛布かけてるよー、なんて

コッソリと感動しながらグリーン車を堪能。

ただ、相変わらず「しっこ止まらない」なので

A駅から新山口までの1時間、マトモに座れてないけどな。

でも乗り心地は普通の指定席と全然違う。

実はこれをきっかけに、私の中でグリーン車の癖がつくことになる。

ちなみに、どうやったら毛布を借りられるのかを後日検索した。

 

家に帰り、主人に簡単な報告をした。

主人はもう関わって欲しくなさそうな雰囲気だったが

今後、X氏たったふたりで一周忌三回忌七回忌十三回忌それ以降も行うのだ。

私が行かないわけにいかないじゃん。

「これからも私は行くよ」とだけ泣きながら伝えた。