姉の死 vol.28

さて、これからのこと。

 

X氏は姉のお骨を、落ち着いたら姉が生前「こんなとこに眠りたい」と言ってた

霊園へお墓を作ろうと考えていたようだ。

もしくはお経をあげてもらったお寺の口利き?でどこかへ納骨?し

10年後か20年後に京都の本山?に移されるとか。

詳しくは覚えてないが、全てX氏にお任せしていた。

 

姉の死は、両親や姉の家族にも内緒にしている。

この先はX氏と私とで、ひっそりと法事を執り行おうと話し合った。

……この話はちょうど瀬戸大橋を渡ってる最中にしたのをよく覚えている。

姉とX氏は8年くらいの付き合いだったが、これから先

一周忌三回忌七回忌その後もと、姉と過ごした8年よりも

これから私とX氏とのお付き合いの方が長くなるようだ。

「これから長い付き合いになりますね」と話をした時に

X氏から提案があった。

この先何十年と付き合っていく私たち、敬語とかやめて

ざっくばらんに打ち解けようと。

X氏は、私は姉から何と呼ばれてたのか?私は姉を何と呼んでたのかと訊いた。

私は「ダリア」と呼ばれ、姉のことは「お姉ちゃん」と呼んでたと答えた。

すると、自分もこれからダリアと呼ぶ、自分のことは「お兄ちゃん」と呼んでくれ、

敬語はやめてざっくばらんに話そうと。

私も同意した。

 

X氏は、私に重大な秘密を抱え込ませることを心配していた。

そりゃそうだよな、姉が亡くなったこと、勝手に火葬まで済ませたことを

これから一生家族には隠し通さなきゃいけないし

万一バレたりしたら大惨事になるのは明らかだ。

何年、何十年先にバレるかもわからない、大変な秘密。

その重荷を、X氏からすれば私に背負わせたのだから。

その重い荷物、罪を少しでも肩代わりしようと考えてくれただろう。

 

……さて、これは生前姉から聞いて知っていたのだが

X氏は、どんな相手とでも友達になれる、仲良くなれる技を持っていると。

どんなに相手が敵対していようとも、話を出来れば必ず自分側へ引き込めると。

 

ああ、これが彼の技なのかと思った。

彼の方はそんなつもりはなかっただろうが、見事に彼のペースに嵌ったというか

術中に嵌ったというか。

こうやって人と親しくなり、人を味方につけるんだなこの人は。

もちろん悪いことではない、とても良いことである。

事前に姉から聞かされてなければ盲信するほどだったのだろうが

予め知ってたので「ああ、これか」と思った。

 

彼のこの凄技?はこの後、また目の当たりにすることになる。

 

それから車中で敬語をやめてざっくばらんに話をする中で

「ダリア、何か困ったことは無いか」「力になりたい」と言われた。

経済的な意味だろうなと見当はついたけど、ここでがっつくのはさすがに見苦しい。

実は私が本当に困っていて力を貸して欲しいのは息子に関する悩みなのだが

ここで話すことでもないかと、この時は言っていない。

母が体を悪くしてほとんど動けなくなっているという話をした。

 

何度か「最大の運命の輪」と書いたのはここである。

もしも当初の予定通りA駅前のシティホテルを取ってもらっていたら

この2日目ドライブは起こらず、私とX氏は堅苦しいままの関係で

次回四十九日を迎えていたことだろう。

しかし、ちょっとしたアクシデントというかタイミングで遠い宿を取り

2日目にうどん県へドライブしてゆっくり話をすることができたからこそ

私とX氏の関係性は大きく変化した。

「恋人の妹」から「限りなく本当の妹に近い存在」となった。

この2日目ドライブが無かったらどうなってただろうと今も考える。