漫画レビュー

「エル」/ 高橋美由紀 ・・・☆5

 

人間ではないもの(「海を守るもの」、精霊……というより神様に近い)と

ふとしたきっかけで関わった人間たちの人生ドラマ。

時代を行ったり来たりしながら人間と関わるという設定が

なんとなく「ポーの一族」を彷彿とさせる。

 

毎回似たような話なのかなーと思いきや、少しずつ物語は動いてるし

ワンパターンでありながらもほぼ毎回じーんと涙してしまった。

何より、読みやすい、わかりやすいという点が非常に良い。

秋田書店ボニータ系)にしては珍しくマイルドな絵柄で

絵柄だけなら90年代の集英社っぽい雰囲気もあるかも。

 

連載は平成初期から時々中断したり新シリーズになったりして

平成20年代まで続いてたっぽい。

中断しつつ単行本で全13巻、絵柄も話もほとんど劣化してないのが凄い。

初期に比べたら終盤のエルの顔がちょっとだけキツくはなってるけど

それでも、20年以上ほぼ変わらないと言って良いレベル。

 

図書館で借りたのを細切れにざっと読みしただけだが

単行本を所有してじっくり時代やエピソードを検証して

どのエピがどれの続きだとか覚えてるともっと面白かっただろう。

 

私、なんでこの漫画を今まで知らなかったかなー。

もし80年代に連載始まった漫画だったら絶対チェックしてただろう。

 

ファンタジー漫画というのは昔からたくさんあるんだけど

最近のは「いかにもゲームの世界観」というのが透けて見える作品が多い。

この「エル」は、昔ながらの古き佳きファンタジーだ。

そこが秋田書店、特にボニータ系の上手いところだな。

もしこれがASKAコミックスとかだとゲーム臭が強すぎて

私の好みには合わないものになってただろう。