姉の死 vol.22

辺りはすっかり暗くなり、小雨がパラつく中をしばらく車を走らせ

姉が住んでいた家に到着した。

 

いやはや凄い。

自分のボキャブラリが少な過ぎてこの家の凄さを表現できないのが残念。

X氏が裕福なのは知っていたし、過去の姉からのメールで広い家に住んでるんだなというのは知っていた。

が、広さ自体はそんなめちゃくちゃ広い家ではない(ふたりで済むには充分過ぎる広さではあるけど)。

中が凄いのだ。本当にお金をかけてる家というのはこうなんだな、という家。

 

持ち主(建てた人)は画家さんで、自分の趣味とセンスで建てた家なんだそう。

そこを借りてるとのことだが、画家さんは個人には貸さず法人にしか貸さないとのことで

X氏の会社の名義で借りてるそうな。

 

まず玄関の広さからして贅沢。

普通の家は部屋の広さは部屋数を取るため玄関の小さい家が多いが、

この空間が贅沢!!ってほど広い玄関。

 

リビングがまた凄い。

 

……って、この凄さを延々並べようかと思ったけど

書いてるだけで虚しいしどうせ私のつたない文では表現できないので省略。

とはいえ覚えておきたいので、いつか気分が乗れば書くかもしれない。

 

家の凄さをまるっと省略し、3人で家に到着。

すぐに葬儀屋さんが来られるとのことで、超絶高級そうなテーブルをちょっと動かした。

重くて持てない、どんだけ高級なんだ……。

 

……って高級描写はもういいや。

葬儀屋さんがちょっとした祭壇を準備された。

ああ、やっぱり私が伝えてた宗派と違うや。こんな祭壇じゃないもん。

 

葬儀屋さんがいろいろ段取りされて一旦帰ってからかな、住職さんが来られた。

急だし元々檀家ではないからだろうか、住職さんでなく奥様が来られた。

この宗派は住職は坊主にしない、割と緩めの戒律なのは知っていたが

奥様、茶髪を通り越して金髪ですぜ……。

緩いにも程があるよな俗っぽいなあと内心思った。

ちなみに住職さんの奥様のことを何と呼ぶかP氏に教わったが忘れてしまった。

 

金髪の住職の奥様(なんて呼ぶんだ)はお経をあげてくださった。

ああ、やっぱ私が伝えてた宗派と違うや。ウチのお経とは違うもん。

間違えてホントごめんよお姉ちゃんと思いながらお経を聞いていた。

が、後から聞くとX氏のご実家はこの宗派だそうな。

それならそれでいいんじゃないかとちょっと思った。

 

このお経は初七日ということになるんだろうか。

通夜も葬儀もせず火葬して骨を持って帰ってお経。

檀家でもない家だし、お寺さんも何じゃそれと思われたかなあ。

 

この宗派は教え自体も戒律が厳しくないようで

亡くなった者は全員極楽浄土へ行けるとのことで

何年後にどう、何年後にどうとかで、70年後はX氏と姉は会えるとか。

厳しい修行をしなくても極楽浄土へ行けるなんて

努力の嫌いな(姉)子にはちょうど良いとX氏は言った。

 

ちなみに亡くなった者が無条件で極楽浄土へ行けるなら

三回忌とか七回忌とか何のために行うのか?

(ウチの宗派では亡くなった者を極楽浄土に導くお手伝いのため行う)

後日P氏(葬儀コーディネーター1級)に詳しく教わったのだが、忘れた。

 

この宗派では何と呼ぶのか、ウチでは「戒名」と呼ぶ名は

「釋典穏」とつけてもらった。

X氏はこの名前を非常に気に入っていた。

ウチの宗派では「位牌」と呼ばれるものは、この宗派には無いそうで

この木の位牌(という呼び名じゃないけど)をこのまま持つそうな。

 

次の四十九日の日程を決める。

亡くなった日が10月7日、四十九日は11月18日だと言われた。

……えらい早くないか?とその時疑問に思ったが黙っていた。

じゃあ11月19日にしましょうと決め、住職の奥様を見送ったしばらく後で

住職さんから電話があり奥様が日にちを間違ってたとのこと。

やっぱりなあー。奥様ゆるゆるやな。

ただ、四十九日は本当の四十九日より早く執り行っても良いそうなので

変更せずこのまま11月18日で行うこととなった。

 

この日程が運命の輪のひとつであった……。

 

*******追記********

書くの忘れてたから後日追記。

超豪華なトイレをお借りした後超絶豪華な洗面台の前を通ると

洗面台の上のアクセサリー置きに、幾つかのアクセサリーが見えた。

ここに置いてるってことは普段からよく身につけてたのだろう、

このうちのひとつ、安物っぽいラピスラズリ色のブレスレットを見て

「出来たらこれをひとつ、遺品としていただけませんか」と

X氏にお願いしてみた。

このブレスレット、失踪前にも姉が持ってたような気がするし。

アクセの中でも特に思い出深いネックレス(某ブランド)はあげられないけど

それ以外のものならナンボでも、そんなんじゃなくても……と

二階の姉の自室に案内された。

姉の自室も超豪華(省略)で、クローゼットを開けてX氏は

これもこれもこれも……と山のようにバッグ(超ハイブランド)などを出してきた。

これはこうでと思い出がいっぱいあるようだが、とりあえず

「じゃあこれ」と、ひとつハイブランドなバッグをいただくことにした。

しかし、実はこれよりも欲しいなと思ったのは

この時自室に無造作に置かれていた、LLサイズのタグがついたままの

黒い長袖インナー、いわゆるババシャツだった(笑)。

ババシャツ一枚くらいが私にはちょうど良いんだよ。