姉の死 vol.21

火葬場へ着くと、霊柩車は正面玄関に着けて先に私を降ろして

姉の棺を降ろす準備を始められた。

X氏とP氏は一般駐車場に誘導されたようでまだ来られない。

この隙に……ってわけじゃないけど、スマホをそっと取り出して写真を撮った。

霊柩車から降ろされようとする姉の棺がチラッと見えるかどうかの写真。

結局この日に撮った写真はそれだけである。

 

いよいよ最期のお別れ、姉の遺体が焼かれる。

一連の件で、この瞬間が一番キツかった。

こんな状況を両親に知らせず見せず、私ひとりで送ってしまって

(ひとりじゃなくてX氏もいたけど)いいのか、本当に悪いことをしてる、

お姉ちゃんごめんねという気持ちでいっぱいになった。

 

しばらく待合室で待機することに。

この時の雑談でX氏が「お姉さんはえいが好きだったでしょう」と言われ

てっきり「映画好き」かと思い、そうそう小さい頃から映画観てて……と返事をしたが

話してるうち「映画」ではなく「絵が好きだったでしょう」に気づいた。

絵、好きだったっけ?何でもX氏の話では美術館に行っては一枚の絵を

あーじゃないこーじゃないと語り合って楽しんだとのことで

元は好きじゃないけどX氏に合わせてたのかな?

それとも私の知らない姉の一面があったのか?

いまだにどちらなのかわからない。

 

思ったより早く、私たちは呼ばれた。

焼き終わって骨となった姉と対面した。

最近ネットの書き込みで

「葬式で棺を閉める時はオイオイ泣いてた人々も

焼き終わって骨を見たら「ほぉーっ」とか言い出す、

それは骨を見ることで一種の諦めがつくから……」という文を読んだ。

そういう意味では私の両親は、姉の骨すら見ることができず

諦めがつかない思いをしてるのかもしれない。

 

骨を拾って骨壺に納める習慣は、かなり地域差があると思う。

某市火葬場の職員さんは、物凄く丁寧にこれはどこの骨、これはどの部分と説明され

体のパーツを極力骨壺に入れてくれようとする。

これは踵だこれは膝だと、下から順番に骨壺に納める。

この瞬間も両親に内緒にしているのが本当に申し訳ないと思った。

 

これはどこ、これはどこと丁寧に骨壺に入れながら

X氏は「(姉)子は左耳が悪かったので、ちゃんと聞こえるよう右耳の骨も入れてくれ」と

かなり細かくここも、ここもと入れてくれた。

本当に愛情深い人だ。

 

焼き終わった骨はピンクに染まっているのが不思議だったが

P氏によると、写真を一緒に焼くとこうなるそうだ。

 

焼き終えた骨を入れた骨壺を抱きながらX氏は「温かい……」と泣いていた。

 

もうだいぶ遅い時間になったため、少々急かされながら火葬場を後にした。

どこへ行くのかと思っていたら、姉が住んでいた家へ向かうという。