ポケモンシール

子供たちの間で「ポケモンシール」が流行っている。130円(だったかな?)のポケモンの菓子パンを買うと、半透明のポケモンキャラクターのシールがオマケで付いており、子供たちはそれを水筒などに貼り、仲間うちで交換したりしている(余談だが上の学年になると、ポケモンシールではなくプロ野球チップスのカードがブームになっているらしい)。

さて、ダリ之助もすっかりブームに乗り、ポケモンパンをねだるようになった。「そんなシールのためにわざわざ高いパンを」とは内心思いつつも、子供には子供の世界がある。また、ケチな厳しい両親にそういった「子供の間でブームになっているくだらないもの」を絶対に買ってもらえなかった私は、その仲間に入ることの出来ない淋しさ、哀しさ、悔しさを充分過ぎるほど理解できるので、ダリ之助にはおつかいのご褒美に「ポケモンパン買ってきてもいいよ」とおこづかいを渡す。これが親として良いことかどうかは判らないけど。

そんなダリ之助のシールコレクションも3枚になった。彼は毎日嬉しそうに水筒に貼ったシールを眺めながら学校へ行く。

しかし昨日、ダリ之助は帰宅するなり泣き出した。

月に何度か、学校行事で「ふれあい給食」と題して、各学年入れ混じったグループで給食をいただくシステムがあるのだが、昨日そのふれあい給食の時間にダリ之助のポケモンシールが一枚、誰かに盗まれたと言うのだ。
「盗まれたんじゃなくてシールが剥がれて落ちただけなのでは?」と聞いてみたけれど、彼曰く、盗んだ人物の見当はついているらしい。名前を知らない上級生が、ダリ之助が食器を片付けに席を外した隙に、彼の水筒からシールを剥がして立ち去ったのを目撃したとのこと。

たかがシールとはいえ、子供なりに大切に集めた宝物を盗られたショックは大きい。
困ったもんだ。

「そのシールちょうだい」「これはダメだけどこれだったらあげる」「これとこれを交換しようよ」「うん、いいよ」
こういったやり取りが出来ない子もいるんだなあ。

・・・と言うよりも・・・。
その子の親は、自分の子供が盗みを働いた事を知るのだろうか。親はその事実を知った時、どうするのだろうか。子供は疚しい気持ちを心に抱いたまま、隠し通すのだろうか。

私としては少々複雑な心境だ。先に述べたように、私は盗んだ子の気持ちが判らなくもない(注・その子がポケモンパンを買ってもらえない子だった場合に限るが)。大人には理解できない子供の世界、付き合いみたいなものが存在するのだ。その輪に入れない子供がどれだけ淋しい思いをすることか。そうした不満が溜まって溜まって遂に衝動的な行動に出る子も存在する。盗みが悪いことくらい、その子が一番良く知っているかもしれない。

何でもかんでも子供が欲しがるままにモノを与えてよいとは思わないけれど、自身が卑屈になるほどモノを与えない、というのも正しいとは思えない。

だが、困った。ダリ之助をどうしようか。

「シール盗られて(無くなって)可哀相に。じゃあ、もう一個買ってあげようね」と買い与えるのが親として正しい行動とは、思えないのだ。

さてどうしよう。何か良い知恵があったらご伝授お願いします。